『縛』
鍵をかけ、エアコンを点ける。

帰宅後の一連の作業を終えた。

携帯を鞄から取り出し、
直ぐに、受信のサインに
気付いた。

「あれ?志央。」

メールを開封する。


『いつまで飲み歩いてんだよ。
明日、お仕置きもんだな。』


他人の事は言えないけど、
そんなそっけない文面。


それでも、志央っぽい口調に、
口元が緩んだ。


『もう帰ってるよ。
おやすみなさい。』

ちょっと、鼓動を
大きく感じながらも、
返信メールを作成する。


送信ボタンを押して、
何だか慌てて、携帯電話を
二つ折りに閉じた。


何で、こんなに
ドキドキしてるんだろう。


呆れるほどに。



きっと、飲み過ぎたせいだ。


そう、否定する自分がいる。



そうしなければ、
罪悪感が募るばかりで。


確実に
私は、嬉しく感じている
けれど。


まだ、
嫌われてないんだって。

拒まれてないんだって。



その喜びの底で
怯える自分がいる。


この関係が崩れる日を
思って。


怖くなる。





 

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