『縛』
押しかけておいて、
俺も勝手なもんだが、
構えないって言われた事が、
意に添わない。


むっとして、
彼女の首に、手をかけた。


「態度わりーな。
逆らってんな。」


冗談のつもりだった。



触れたいという、
深層心理も
働いたんだと思う。

少し、指先に力をこめた。

ほんの・・・少し。



悪態を付かれると思っていた。


忙しいとか、
ヤメテとか・・・



でも


返ってきたのは、


「くっ・・」

っていう、


甘い声だった。



心臓が、跳ねた。

予想が的中したような
実感が
俺を翻弄する。


「ほんっと、M子だな。
サラは。」


空気を変えるために
言ってみた台詞。


でも、それすら


「ち・・がう・・も」

途絶えかけの吐息が
喉から溢れてもれる。


ちょっと力をこめるだけで、
次から次へと、
甘い吐息が零れる。


 
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