『縛』
ただ、そういって俯く。

やっぱ、何か、
考えてるんだよな。


「それなら・・・

言えるようになるまで
待つけどな。」


俺は、言葉を区切る。


今、コイツに
わかっておいてほしいことは
何だろう?


一杯、あるんだけど・・・


考えているうちに
完全に目が冴えた。



サラが出勤の準備を始める。


せめて、コーヒー位は
いれてやろう。

俺も、のみたいし。


そう思いたって、
準備にとりかかる。

サラが連れて来た
コーヒ−メ−カ−は、
なかなかスグレモノで、
俺も、かなり気に入っている。


すぐに、彼女の好きな
モカの香りが、
キッチンを満たし始めた。


「わあ・・・いい香り。」

カップを渡すと、
ニッコリ笑ってサラはいう。

やっぱり

この、二人の空間がいい。


「サラ、
ちゃんと帰ってこいよ。

おまえの帰ってくる所は
ここだから。

オマエんちは、
ここなんだから。

一緒に住んでるんだから
当たり前に、帰って来て
俺の事、待ってて。」


コーヒーの湯気の向こうの
サラの瞳が歪む。



 
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