『縛』
 

「うん・・・。

ちゃんと帰ってくる。」


彼女が俯き、
その手の甲に
涙がはじけた。


「サラの家は、ここだから。」


もう一度だけ、言った。


「今、言えない事、
いえる時が来たら、
伝える相手も俺だよ。
サラ。」

服の袖で、涙を拭ってやる。

「オマエを愛して
救わなきゃいけないのは俺。

俺が、反対にそれを望む相手は
サラ。

一緒にいて、やることって
それだけなんだ。」


・・・・それだけでいいんだ。


だから、サラ


「だからね、
ちゃんと傍にいて。」


これから、出勤しなきゃ
いけないはずなのに
顔を覆って
彼女は、激しく
泣きじゃくりだした。


彼女は・・・

多分、傷つきすぎてる。


色んな事に。



自分自身は、
気持ちを言葉に
できないくせに、
相手から、
それがないと
不安になる。


相手を信用してれば
行動や仕種なんかで
解るものが

コイツには、
その土壌がなくて。

時間をかけて、
諭してやらなくちゃ
いけない。


言葉と
態度と
気持ちと・・・


自分の全てで。


 

< 235 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop