『縛』
志央の住むマンションも、
駅近くの高級マンション
だった。

最寄り駅は、
私と同じだけど。

・・・いい暮らし
してるのね。


私なんて、そこの駅から
十分近く歩くのに。

全く、羨ましいったら。

「結構、近くに
住んでたんだな。」

志央がいう。

「そうだね。
同時期から暮らす割に、
知らなかったよ。」

生活時間がずれてるせいか、
勤めてからずっと、
この辺に住んでるのに、
全然、知らなかった。


「どこいくの?」

飲みにいくって、志央は
肩を抱いたまま歩き出して、
しばらく経つ。

「俺が、飲みにいくところ。
基本、ここだから。」

彼は、準備中の看板を無視して
会員制の店の扉を押し開けた。

「俺を探すんなら、ここか、
昨日のアクアか、
今日のレコード屋ね。」

彼は言う。

結構、行動範囲が
狭い事に驚いた。

「探すって、電話じゃ、
居場所、教えてくれないの?」

探す事もないとは思うけど、
参考までに尋ねた。

「お前次第だよ。サラ。
あ。この店には、
俺の身内しか、入れないから。」

マスターよろしくねって、
この子、覚えておいてねって、
彼は紹介した。


 
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