『縛』
 


一時間ほど、二人で飲んで
店を出た。



『サラ、

俺のコト、


好きになって』


そんな
甘い言葉に


気持ちが、
揺るがないはずがない。


だけど・・・


私は・・・


ドアに、キーを差し込む。

サムターンの、ゴトッという
開錠の音が、夜中のハイツに
響く。

「どうぞ。はいって。」

小声で、志央を促す。

「ども。ただいまっ。」

小声で、彼もいって、
私の部屋に入る。

暗くて狭い玄関で、
二人して靴を脱ぐけど

「ちょっ、サラ、押すなって。
初めての間取りなんだから!」

「狭いんだから、
早くはいってって。」

今日、何度めかの
小競り合いをしながら、
手探りで電気をつけた。



「ここに、住んでたんだな。」


明るくなった部屋を見渡して、
彼はそういった。


「二人で居れなくはないよね。」

部屋数をみて、
彼はいう。

「何いってんの。
便利な所にすんでるんだから
わざわざ、こんな所に
来なくていいの。
なにか飲む?」

エアコンを入れながら問う。

「なんか、温かいモノがほしい。」

まだ寒い部屋の真ん中で
彼は言った。


 

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