『縛』
帰るのが遅くなった分、
室内は冷え切っていて、
エアコンをいれても、
なかなか温もりそうになかった。

適当にお湯をわかす。

本当に寒い。

コンロの火に手をかざし、
指さきを温め、
湯が沸くのを待つ。


『昨日、今日
会っただけで・・・』

彼がいった台詞。


確かに、そう。

そんな男を部屋にいれて
どーするつもりなんだって
自分自身に呆れる。

マグカップに、
ココアをそそぎ、
一つを、志央に渡した。

「サンキュ。」

彼は、冷えた指を、
カップで温める様に、
受け取った。

幾分、部屋は温もったけど、
まだまだ寒くて、私たちは、
防寒着も脱げずにいる。

「適当に座ってね。」

「ああ。」

・・・っていっても、
せいぜい、ベッドくらいしか
座れる場所もなくて。

並んで座り、
ココアで暖をとる。

「しかし・・・
サラも大胆だよね。
ほぼ初対面のオトコを
部屋に連れ込んで、
ベッドルームにいれるとは。」

自分が、選べっていった癖に
どーゆー言い草だ!とは
思いつつも、一理ある。

「イレギュラーに
きまってんでしょ。
エアコンがなくていいなら
隣の部屋使えば?」



 



< 67 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop