『縛』

「ひっでぇ。

まあ、冗談は抜きでさ。

あんま、感心しないな。
こういうの。

俺に、いい噂無いの
知ってるでしょ？」

なにかを、
探るような目。

「ええ。電車の天吊りで
よく見るよね。」

さらっと流す。

ひっかかったりしない。

この程度の、
子供騙しな、
駆け引きなんて。

「あれって・・・
信じてる？」

彼は、言って。

「読んだ事ないから、
わかんない。

見出しだけ読む分には、
人間性を問われても
仕方ないって、感じよね。」

「あるわけねーだろ？！
どんだけケダモノなんだよ。」

彼は、苦笑する。

「私が、いうような
事じゃないけど・・・」


いいかけて、口をつぐんだ。


思い出したのは、
後部座席の携帯電話。

聞けば、
電池がきれたら、
気が向いた時に充電して
かけなおす事もないらしい。


「何？プライベートに、
干渉するような事なら、
黙ってていいよ。」

彼は、拒絶するように
言った。

「あのさ。

志央の、プライベートって、
どこからなわけ？」

よくわからなくて問う。

今日なんて、
全部、プライベートだと
思うけど・・・。