『縛』
志央は、まだ、薄暗い間に
この部屋を後にした。

緊張していた全身から、
一気に力が抜けた。


「・・・俺、一晩、
オンナと二人キリでいて
何にもなかったのって・・・
初めてなんだけど・・・。」

「ふーん。ある意味、
初体験じゃん。
よかったね。」

。予想と違って、目覚めがすっきりしている彼と、コーヒーを飲みながら、交わした会話。


そんなの・・・

・・・私だって、
初めてだよ・・・。


私に、何にもなきゃ、
確実に、そうなってたと、
思うわよ・・・。




「今日の所は、
折れてやるけど、
いつまでも通ると思うなよ。」

彼は、なにか企んだ目をして言った。

「いや、それは、
私が決める事だし。」

「残念ながら、サラが、
やることは、オトコ関係の
整理だけ。」

馬鹿だなぁって、
彼は笑う。


バカは、あんたよ・・・。


それこそ、私の性癖も
しらないくせに・・・

いつもどおりに、
口説いてんじゃないわよ。


心の中で、毒を吐いた。


・・・・
本当は、それ自体が、


筋違いなんだけど。


虚しくなった。



 
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