『縛』

/小さな日常

休日の会社。

だだっ広いオフィスは、
いつもと違って静かで、
端の方まで人垣なしに
見渡せる。

デスクに向かい、
パソコンの電源をいれた。

やっぱ、上司と営業がいないと
仕事が、捗る。

いい感じだ。

あと、数時間で帰れるな。

そう思ったが、
そんなうまくは、
事はすすまなかった。

「もしかして、鈴木さん?!」

背後から、慌てた声がかけられ
振り返る。

何か急らしく、
雑用が押し付けられた。


・・・世の中、
こんなモノよね。


結局、慣れない資料と格闘し、
予定の作業を終えたのは、
定時より、随分遅くなってから
だった。


十時を過ぎた頃、
くたくたになって会社をでた。


スーパーで買い物をして、
一週間分の重たい袋を持って、
駅からの道のりを歩く。


昼間に見上げた、志央の住む
マンションを通過する。

「疲れた・・・」

荷物は重いし・・。

すっかり静まり返った
住宅街を歩く。

鞄の中で、携帯が鳴った。

もう・・こんな時に。

一応、着信相手を、
確認する。

ああ、お兄ちゃんだ・・・

笑みがこぼれた。



 
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