『縛』
もう少し、彼を、
からかおうと思った。

「・・・もしかして・・・
わざわざ、そんなこと
聞きに来てくれたの?」


「そう。」


素直な返事が返ってきて、
私の方が驚く。

「・・安心したら、腹へった。
さっきは、喉
通らなかったんだ。

サラ、何か食べたい。
付き合ってよ。」

心底、安心した顔。

お兄ちゃんてなんて、
普通だけどなあ。

世間が、カリスマとか、
ゆってたのは知ってるけど。


責任感が強くて、
優しくて、
しょっちゅう喧嘩してた人。

いつも、いっぱい
女の人がいて・・・

そのくせ、私には、
そういうの厳しくて、
でも、甘くて。

あの人は、いつも
変わることなく、
お兄ちゃんなのにね。


みんな、変なの。


「ねぇ。
私もまだ食べてないから、
なんか作ろうか?」

「うん。」

私の提案に、彼は、
ニッコリ笑んだ。

こうしてると可愛いのにね。

ブルーグレーの瞳が、
穏やかになった。

さっきは、あんなに
機嫌が悪かったのが、
嘘みたい。


なんか・・・彼は、
仔犬みたい。

初めて持った印象は、
不思議な子だ・・って、
事だった。


 
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