愛は要らない
男性の名前だと、はじめ思わなかった
けれど、会ってみれば確かな男だった
──コンコンッ
ドアをノックする音が聞こえて、慌ててソファーから起き上がる綾野
「まいったよ。招待してないのに、何人も女性が押し寄せてくる」
「・・・・・・なんだ」
入ってきた人物に安堵して、綾野はソファーに座り直す
純白の燕尾服が、嫌みなくらいに似合う目の前の男は、鏡の前で前髪を整えている
「もうすぐしたら、父さんたちが来るよ」