愛は要らない


綾野の祖母・文子は、若くに夫を亡くし、何十年も1人で暮らしている

若くに夫を亡くしたということもあって、再婚の話もあったが、文子は全て断っていた

綾野の目に映る祖母は、自分にいつでも正直で、誇りを持っていた

憧れるには、十分だった


「はい、もしもし?」


鳴った電話を取って、声の人物に微笑んだ


「あら、すぐ近くにいるの?じゃあ、迎えに行きましょう」


待ち人は、ようやく訪れた

文子は電話を切ると、優しい笑いを漏らした


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