紫陽花
「起きなさい!」
御袋の声で目が覚める。
また名前が思い出せない少女の夢を見た。
『誰だろ?』
あれから時は流れて俺ももう中学三年生。
関西弁はいつの間にか喋らなくなってた。
っていうか伝わらないことが多すぎて喋るのをやめた。
今日から俺も三年。やたら気合い入れて30分時間をかけて髪をセットし、いつもの時代遅れのボンタンに長ランの格好で来た。
学校に着いたらすでにクラス分けの貼り紙は外されてた。
『俺のクラスどこだよ…』
と独り考えながら階段を昇る。
そして自分のクラスがわかった。
新学年しょっぱなの遅刻で先生は心なしか悩ましげな顔をしてる。
自分の席に着くと、前の席には俺が心から嫌いなやつがこっちを見てる。
「何見てんだよブス」
「ねーねーアド交換しよ!正樹!」
『俺の言葉シカト!?』
「嫌だね。てか馴れ馴れしい。」
そういうと前に座ってた女はすねて前を向き直した。
何の因果かこの女と前後の席。あまり来ない学校と言えど不愉快な席順だ。
前に座ってる女の名前は木ノ下葵。
俺はこいつが大嫌いだ。ちょっとモテるからって調子に乗って天然ぶる。その癖寝ている俺を起こす。