逢瀬を重ね、君を愛す
序章


「ふっふふーん♪」


鼻歌混じりの軽い足取りで帰路につく。

終礼中に来たお母さんからのメールが原因。



『アップルパイ焼いてるから早く帰っておいでー(^ω^)』



大好物のアップルパイ。
これは早く帰るに決まってるでしょ!!


住宅街を通り抜けて、低い段差を飛び越える。

そして目の前にある長い階段を降りきれば、すぐに家だ。

勢いよく階段を駆け降り、
最後の一段でジャンプした。


「ほっ。」


両手を上げて10.0のポーズ。

古いか。

周りを気にすることなく家へと足を1歩出した時だった。


「うっ…わぁぁぁぁぁぁぁ!?」


足がガクッと下がり、地面がない。

しかも上がらない。

恐る恐る下を見ると右足が変な穴にはまっていた。


「なっ…何これぇー!!」


なんでこんなところに穴なんて空いてるわけ!?


慌てて足を引き抜こうとした時、その穴の範囲が大きく広がった。



「はぁ?!ちょ……」


逃げ出す暇もなく、大きな穴へと落ちていく。


「あたしのアップルパイーー!!」


この叫び声だけを残して。
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