逢瀬を重ね、君を愛す
序章
「ふっふふーん♪」
鼻歌混じりの軽い足取りで帰路につく。
終礼中に来たお母さんからのメールが原因。
『アップルパイ焼いてるから早く帰っておいでー(^ω^)』
大好物のアップルパイ。
これは早く帰るに決まってるでしょ!!
住宅街を通り抜けて、低い段差を飛び越える。
そして目の前にある長い階段を降りきれば、すぐに家だ。
勢いよく階段を駆け降り、
最後の一段でジャンプした。
「ほっ。」
両手を上げて10.0のポーズ。
古いか。
周りを気にすることなく家へと足を1歩出した時だった。
「うっ…わぁぁぁぁぁぁぁ!?」
足がガクッと下がり、地面がない。
しかも上がらない。
恐る恐る下を見ると右足が変な穴にはまっていた。
「なっ…何これぇー!!」
なんでこんなところに穴なんて空いてるわけ!?
慌てて足を引き抜こうとした時、その穴の範囲が大きく広がった。
「はぁ?!ちょ……」
逃げ出す暇もなく、大きな穴へと落ちていく。
「あたしのアップルパイーー!!」
この叫び声だけを残して。
< 1 / 159 >