逢瀬を重ね、君を愛す


「薫ーっ!!」


ガシィッと近寄ってきた薫の腕を掴むと勢い良く前後に振る。


「ねぇ、薫!!ココどこ!?日本!?いや、日本だよね!!え?じゃあ時代!?時代だよ!!」

「え、ちょ・・・落ち着け、彩音」

「今何年!?ってか、なんであたしがここに居るの?コレって、映画とかのセット?カメラどこよ、カメラ!!それに・・・」

「落ち着けっ!!」


彩音の言葉を遮り、薫が大きく声を出すと、彩音は小さく「ごめん」と呟いた。
ふぅ、と息を吐き出すと薫は彩音の頭に手を置いた。


「混乱しているのは分かる。服が違うから、彩音はどこか違う所からきたんだろ?」


そう優しく問いてくれる薫に彩音は大きくうなずく。


「・・・なんで、どうして、ココに来たのか分からないの。」


薫にすがるように服を握り締める。
こらえていた涙があふれ落ちる。


「ただ・・・家に帰ってただけなのに、気付いたらこの世界に居たのっ。」


そう、ただお母さんが焼いてくれたアップルパイを楽しみに家に帰ってただけだった。
こんなの日常茶飯事で、ドアを開ければ笑顔でパイと一緒にお母さんが出迎えてくれる。

なのに・・・


「全然っ!!知らないとこに居たのっ!!」


右も左も分からない。

今までと何もかもが違う。

常識さえずれている、何も知らない土地。
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