逢瀬を重ね、君を愛す
「ちっ…なんだネコかよ」
奴らの残念そうな声が聞こえてくる。
しっしとネコを追いやり、こっちとは反対の方向へと散っていく。
この危機の回避に小さく安堵の息を漏らしたかったが、そうもいかなかった。
ネコが飛び出した瞬間に押さえられた口と体。
心臓が凍りつくほどの恐怖に声もでなかったのだが、直後漂ってきた香りに涙腺が緩む。
「静かに」
大好きな声音に、小さく頷く。
この不安な状況を打破してくれる人に彩音は心当たりがあった。
そっと、かぶってきた着物で包み込まれると、その人は軽々と彩音を抱き上げ羅城門から抜けだした。