逢瀬を重ね、君を愛す
京を北上し、人通りの多い通りへ出ると、その人は彩音の手を引っ張って路地裏へと進んだ。
そこで顔を隠していた布をとると、やはり予想していた人だった。
「っ…薫…」
どっと、さきほどの恐怖が蘇る。
涙目に震える彩音を薫は優しく引き寄せると彩音はすがるように薫に抱き着いた。
ぽんぽんと、リズムよくあやされれば、それまで耐えていた涙が決壊した。
「バカだろ、なんで内裏を出たんだ」
そんな叱責に答える暇もなく嗚咽を繰りかえす。
顔を上げなくてもわかる。
ひしひしとそのオーラから薫の怒りが伝わってくる。
それでも、彩音をあやすその手はあくまで優しい。
聞きたいことは山ほどあった。
なんでここにいるのか。なんであの場所が分かったのか。あれだけ忙しかった仕事は。
なのに、ここに薫がいるだけで満足している自分がいる。
―――この人が…愛しい。