逢瀬を重ね、君を愛す
薫の為に悩んだ。
迷った。逃げ出した。
そして、恐怖に落ちた先でやっぱり光をくれるのは薫だった。
「ご…ごめん…な、さいっ…」
嗚咽交じりの謝罪に、コンと後頭部に重みが伝わる。
そして、さきほどよりもさらに近くで薫の声が聞こえた。
「…あんまり、心配させないでくれ。」
ぎゅっと、薫の腕の力が強くなった。
「っふ…ごめ…ごめんなさっ…薫、ごめんっ…」
何度も、何度も。
同じ言葉を繰りかえす。
どれだけ想おうと、言えない思いがある。
こんなにも大切だから、絶対に…傷つけたくない。
それでも、この溢れ出す思いはどうしよう。
それでも、この優しい手を手放すなんて、光に導いてくれる薫を…
諦めることができるとは…思えなかった。