逢瀬を重ね、君を愛す
最終章
悠久の約束
「っ、薫…薫…」
近くにあった着物を頭からかぶり、人ごみに紛れながらその中央へと足を進める。
―――会いたい、会いたいよ。
このままじゃ近づけないと感じた彩音は踵を返しあの秘密の通路へ向かう。
「彩音!」
声とともに腕を掴まれ、勢いよく振り返ると焦った表情の清雅がいた。
「せ…清雅…」
「おま…えっ…どこ…向、かって…んだよ」
必死に追いかけてきてくれたのか、息も絶え絶えに彩音を引っ張る。
さきほどの人ごみの方へ。
「だめ…だめ、清雅…そっちは…」
人が多すぎて進めない。そう言おうとした彩音に清雅は深呼吸で呼吸を整えると懐から札を出して彩音に突き出す。
「大丈、夫だから。これ…もって、ろ」
軽く袖の端で汗をぬぐうと、前を見つめ堂々と歩き出す。
戸惑う彩音に目線でついてこいと促し、そのまま人ごみの中へ歩いていく。
「だ…大丈夫じゃないでしょ、これ…」
無謀なようなこの光景にそれでもついていくしかないのかと、彩音は顔を伏せながら清雅の後ろを歩いて行った。