逢瀬を重ね、君を愛す

そのまま奥へ奥へとすすみ、開け放たれた広い屋敷。



「…ここに…いるの?薫が」

「ああ…あの、立派な建物の中にいる。」


人気がなくなった場所で、急に清雅が地面に膝をつくように倒れこんだ。


「清雅!」

慌てて駆けより、そっと背中をさするが清雅の呼吸は激しく上下する。
自分の為にここまで頑張ってくれたのだと思うと、ぎゅっとこみ上げてくるものがある。


「清雅…」

「俺さ…」

彩音の声と重なるように清雅の言葉が響く。こんな風に話す時間はないとわかっているのに、清雅の言葉から耳が離れない。


「本当に最初はお前のこと嫌いだった。突然現れて、かき乱して…薫を変えて。」


そっと、さすっていた手を清雅のぬくもりが包み込む。
手がつながれたのだと理解した時には、目の前で微笑む清雅の表情から目が離せなかった。


「俺にとって薫は大事だ。だから薫を優先するつもりだった。つもりだったんだけどな。」


ぎゅっと手に力がこもる。少し痛いくらいの強さ。でも、この痛みが、清雅の想いの強さ。
自分だって、ここまで言われて察せないほど鈍感じゃない。でも、答えられない。


彩音の表情を読み取ったのか、清雅が少し困ったように苦笑する。


「ごめん、困らせたいわけじゃない。お前の想いも知ってるし、それに横槍入れたいわけじゃない。ただ、言っておきたかった。残りの時間、お前と友人で居られるように。」


思わず眉間にしわが寄ってしまう。こんな苦しそうな表情をする清雅なんて初めてだ。いままで見たことないこの表情を自分がさせている。唇をかみしめて、そっとその頬に触れた。
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