逢瀬を重ね、君を愛す

その言葉に視線を泳がすと、追い打ちをかけるように、足元に小さな石が飛んできた。


「お前、早くいけよ。俺の努力を無駄にする気か?」

「い、石投げないでよ!危ないでしょ!って、ちょっと・・・!」


抗議する間にもどんどん清雅は彩音の足元に向かって小石を投げてくる。
お蔭でどんどん清雅から遠ざかるように足は進んでいく。


「とっとといけ、バカ女」

「言われなくても行くわよ、バカ男」


もう、このまま行ってやる。ぷいっと清雅に背を向け捨て台詞を吐くとそのまま駆け出す。
が、数歩進んだところで振り返る。


「清雅、お礼したいし…私の部屋で待ってていいわよ。友達、なんだしね。」


清雅の顔も見れずにそれだけ言い残す。この短文を言うだけなのに、凄く恥ずかしい。
清雅の返事も待たず、振り切るように彩音はそのまま駆け出した。


「は…何だよ、あいつ」


はははと、小さな笑いが込み上げ目を覆う。


「あーーーー、言っちゃった。」


後悔を匂わす言葉は思いのほかすっきりとした声音だった。
胸の内を取り巻く様々な感情がすっと降りていく。


「友達…ね」


自分が望んだ、関係だ。思いのほかしっくりとくる。
目を覆っていた手をそのまま口元へと下げる。


「わかった、待ってるよ」


そっと目を閉じ、想い描く。さっきの一瞬を思い出すように。
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