逢瀬を重ね、君を愛す

ずぷっと。今までふわふわしていた足が何かにはまる。おそるおそる足元を見ると、見たことのある黒い穴に足が埋まっている。


「薫っ…!!!」


懇願するように薫の名前を叫ぶが、薫は切ない表情を浮かべゆっくり首を振る。


「彩音、君は自分の世界へお帰り。」

「っ…」


なぜこんなことになったのかわからない。清雅の言った日よりも、もっと早い。
まだ、時間があったはずなのに。


「いやだ…まだ…まだ離れたくないよっ…薫っ…!!!」

「彩音」


つながれた手はまとめられたまま、片手を離した薫はそっと彩音の溢れる涙をぬぐう。


「彩音が、この時代で俺に会ってくれたおかげで俺は救われた。彩音が遠花を忘れさせてくれた。」


そのまま、頬を優しい手が撫でる。


「彩音が、退屈だった俺の日常を壊してくれたんだ。」


彩音を見つめる薫の瞳は優しい。
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