逢瀬を重ね、君を愛す
「でね、このお寺は平安時代のとある帝が愛する妃の為に建てたお寺なのよ」
「え、そうなんですか!?」
いろいろ質問するうちに打ち解け、お寺の縁側でお茶をすすりながら話を聞いていた。
「ええ、その帝の一番大事な妃だったみたいで。その思いが時代を超えても残るようにこのお寺を建てて、そしていつまでも続くように、自分の信頼できる部下夫婦にずっと守るように託したのよ。それが私の家系ね。」
「え!?春香さん、その部下夫婦の子孫なんですか!?」
吹き出しそうになったお茶をなんとか耐えて、春香さんに向き直る。
「そうなのよー。しかもその部下夫婦がこのお寺を守るために帝のものを離れて、苗字まで”桜宮”って変えて守りたかったらしいのよねー」
「わあ…すごいですね!その帝…そんなにその奥さんのこと大好きだったんですね」
「一夫多妻制の時代だからたくさん奥さんいたみたいだけど…その人は特別だったみたいね。あ、ちょっとまってて。いいもの見せてあげる。年季ものよー」
うきうきとしながら、春香さんは立ち上がると、奥へ引っ込んでしまった。
その様子を見送り、再びお茶をすすり直しながら景色を眺める。
大きな桜を中心に桜並木が広がり、その間からは眺めのいい景色が広がる。
お茶を置いて、そっと立ち上がるとその一番大きな桜の木へ近寄る。
「…大きい…この桜の木はいったいいつからこの世界を見守ってきたんだろう。」
太い幹に手を置き、そっと一周回るとその太さの影になってわからなかったのだが、小さな岩が置いてあった。不思議に思って、その岩を除くと、文字が刻まれていた。
「あれ?文字があ…る」
”悠久の約束 愛しき人 待ちわびぬ 薫”
どくんと、体が脈打つ。
無意識に桜の木を仰ぎ見る。