逢瀬を重ね、君を愛す
目の間にたたずむ薫のたもとを握りしめる。
涙であふれた目を上げ薫を見つめると、抜け殻のように、部屋を見渡す姿が飛び込んできた。
「薫…」
「…ん?」
名前を呼ぶと、そっと視線が絡む。でも、その目に映るのは悲しみの色だった。
「っ…ご、ごめんな…ごめん…」
次々と謝罪の言葉が漏れ出す。
薫にすがるように、チカラの限り泣き叫びながら謝罪の言葉を口にする清雅に薫はふわりとその体を包み込んだ。
「なんで…清雅が謝るんだよ」
「だ・・・って、だって…これじゃあ、また。薫を傷つけた」
今度こそ。今度こそずっと薫の傍にいてくれると思っていた。彩音なら。
なのに、また違う形で薫の傍から消えていく。
「…いいんだよ」
「は…?」
自分の気持ちとは裏腹に薫の言葉はとても落ち着いていた。
「遠花の時とは違う。彩音は違う。」
はっきりとした声に、そっと顔を上げると、ふわりと。
薫は笑っていた。
「彩音は、俺を変えてくれたから。」
それは、表情から見てもわかる。確かに遠花の時とは違う。
傷ついた、でも。底辺までは落ちていない。
全てを失ったと、薫自身から訴えていたあの頃とはちがう。
「彩音のためにも、俺もがんばらなきゃな」
そっと肩に薫の手が置かれる。
そして、真っ直ぐ清雅を見つめるまなざしが真剣味を伴う。
「清雅、お前は俺の傍にいてくれ」
当然だろ。彩音を失って、痛みが0なわけがない。
少しずつでも、俺は…薫の助けになれるのなら。
「御意…薫、お前の御心のままに」
友人として、部下として。
彩音の分まで俺が支えてやるよ…。