逢瀬を重ね、君を愛す
そして、先ほどの夢。
「っふ・・・」
溢れだしそうな嗚咽を我慢し、手で口を覆う。
泣いている姿を見られたくなくて顔を覆うように下を向くと床にぽつぽつと染みを作った。
「俺も協力する。薫、お前たちを俺が逢わせてやるよ。」
「清雅・・・清雅、感謝・・・する。ありがとうな・・・」
そっと差し伸べられた手を握りしめ、強く、強く握り締めるとグイッと手を引かれ清雅の方へ倒れこむと力強く抱きしめられた。
「だから・・・お前も・・・前に進むぞ・・・!な・・・!」
抱きしめられたせいで、清雅の表情は見えないが耳元で聞こえた声が震えていた。
そうだ。その通りだ。
もう、そろそろ前に進まなきゃいけない。
彩音との約束を果たし、もう一度逢うために。
「そうだな・・・」
過去に囚われるのは、今日で最後だ。
前に、進むために。
清雅の強い思いにこたえるように、薫も同じようにその背を抱きしめ返した。