逢瀬を重ね、君を愛す

「だが、これで。そのような圧力はなくなっていくだろう」


そしてポンと頭に手を置かれる。


「これからは、できるだけ通うようにする。だから、姫も無茶をしないでくれ。」


そういう帝を見つめながら、何かが引っかかる。
はい。と小さくつぶやくが、違う。何かが違うと心が叫ぶ。


「み、帝っ…」


そっと手を伸ばして立ち上がろうとした帝の服の裾を掴む。
驚いた表情で動きを止めた帝に、必死に訴える。


「私は・・・私は、そのために昨日の行動をしたのではありません!」

「え・・・?」


姫の言葉に信じられないという表情を浮かべた帝はもう一度腰を下ろす。
そして整理するようにゆっくり、一つずつ言葉にする。


「どういうこと?周りの圧力に耐えかねて、俺に動くように昨日こっちまできたんじゃないの?」

「違います!それは帝の勘違いです!」


ギュッと、信じてもらえるように帝の手を握る。


「私は・・・あ、逢いにきて欲しかったのは本当です。これをきっかけに帝が、私のところへ来てくれたらと思っていた気持ちもあります。でも・・・それは・・・」


ぐっと言葉に詰まる。
気持ちは固まっているのに、続きが出てこない。


「それは・・・?」


促すように帝が手を握り返してくる。その力に背中を押されるように、ほぼ叫ぶように心を伝えた。


「私は・・・帝、あ・・・あなたが好きなのです!私が・・・あなたに逢いたかったのです!!!」


恥ずかしくて、顔を上げられない。
鏡を見なくてもわかる。今、自分の顔はリンゴのように真っ赤なのだと。
それに、息をのんだ帝からは何も言われない。
当然だ、帝には想う人がいるのだから。でもそれを理解していても、心のどこかで微かな希望を抱いていたのだと実感する。


どれだけの時間が過ぎただろう。
どちらとも動こうとせず、時間だけがすぎ、いつのまにか外からチュンチュンと鳥の声が聞こえ始める。
そろそろ、頭も覚めてきて何か言った方がいいのかと姫が顔を上げたときだった。


「・・・私は・・・あなたに話さねばならないことがあります。」


真剣な面持ちで、そう答えた帝の言葉に、つい、息をのんだ。
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