逢瀬を重ね、君を愛す
――――――数年後
「帝、お呼びでしょうか」
薫に呼び出しをくらい、蛍は久しぶりに薫の仕事場所へと足を進めた。
「おー、早かったな蛍。」
変わらずに蛍を出迎える帝の表情は昔とかわらない。
ただ、その腕に小さな影がいる。
「花音様も大きくなったのですね」
「ああ、もうやんちゃで困る」
苦笑しながら腕の中に居る姫を見つめながら、親になったという雰囲気が漂う。
昨年生まれた薫と雪奈の姫だ。双子だったのだが、花音の方がより薫に似たと思う。
「で。帝、お話とは」
そう切り出した蛍に薫は一枚の紙を手渡す。
それを受け取った蛍は目を見張る。
「・・・これは」
「あの山の山頂に神社を建てるんだ。それこそ、何年も、何百年も、何千年も続くような寺を。
だから、そこをお前に頼みたい。」
ぐっと手に力を込める。
くしゃりと紙が歪む。
「蛍、現時点をもって補佐役を解任、新たに”桜宮”の姓を与え・・・神社の守護役を言い渡す。」
「・・・私は、もっと帝のそばに居たい。といっても・・・受け入れてはくれないのですよね」
「・・・ああ、すまない蛍。桜乃と幸せにな」
「・・・長年の、計画ですものね」
すっと視線をずらされるが、一歩薫が蛍へ近づく。
そして手渡される小さな姫をわけもわからず受け取る。
「姫を、頼む。すまない、蛍。頼む。」
その一言ですべてを理解したのか、苦痛に顔をゆがめながら重々しく頭を下げた。
「御意に」