逢瀬を重ね、君を愛す

しかし。


「待て。誰が女顔?」

「薫」


間髪入れず、即答する彩音。


「俺のどこが女顔なんだよ」

「そこまで綺麗な顔だし、女装してみてよ!絶対男の子ってバレないから。」

「んな事するか!!」


「…くっ…」


2人の言い合いの途中で不意に入った笑い声。


「あははっ、良いですね。女装ですか、確かに似合うでしょう。」


2人が蛍へ視線を移すと、笑っている姿が目にはいる。
笑いを納めると、蛍は彩音へ言った。


「彩音殿。この蛍、帝が幼少の頃からずっと見てきましたが、ここまで他人に本音で言い合いされる姿を初めて見ました。」


すっと彩音の前に手を出す。


「帝を、よろしくお願いしますね」

「…っぁ、は…はいっ!!」


赤くなりながらも、彩音は蛍の手を取った。
その様子に蛍は微笑む。


「申し遅れました。私、藤原蛍と申します。帝の…お手伝いをしていますので、よくお逢いできるかと。」

「あ、本式彩音です。」



ペコッと頭を下げると、薫によって握っている手を解かれた。
< 26 / 159 >

この作品をシェア

pagetop