逢瀬を重ね、君を愛す
帰ってきた彩音を桜乃は優しく迎え入れてくれた。
結局忙しかったみたいで薫が尋ねて来たのは夜だった。
「ごめんな、彩音。仕事場に女人は入れないんだ。」
そう説明してくれた薫は優しく頭を撫でてくれた。
気遣ってくれた嬉しさから顔がにやける。
それを隠すように冗談を言ってみた。
「なら、次は男装しようかな」
「……いい案だな。」
真面目な顔で彩音の冗談を薫は受け取った。
「え…?…薫、それ冗談…」
「いい案じゃないですか、これで仕事集中してくれますよね?」
彩音の言葉を遮ったのは、今まで居なかった蛍だ。
「ほっ…蛍さん?」
「ちょっと待て。蛍…お前…何を持ってる。」
座った目で薫は蛍を見ると、蛍は手にたくさんの書簡を持っていた。
「あれを実行なさりたいなら、これを終わらさないとですよね。追加です」
爽やかな笑みと共に言ってのけた蛍。
すると薫のこめかみに青筋が浮いた。
「その笑顔、ムカツクな。」
「やるべき事はやってもらわないと。」
さすがの薫も蛍には勝てないのか、ため息を着くと立ち上がった。
「彩音」
「は、はいっ!!」
急に名前を呼ばれて思わず立ち上がると、薫の香りにまとわれる。