逢瀬を重ね、君を愛す
一応収まった糸に息をつくと、後ろから伸びた手に布を奪われる。
「上手くなったのか?」
いきなり現れた薫に抵抗出来なくて、奪われた布は薫の前に晒されている。
彩音の縫った位置を見て薫は苦笑した。
小さく 成長がないな。 と呟いて。
「うるさいっ!!」
半ば無理矢理奪い返すと、両手で包み込むように抱き締める。
「帝っ!彩音もまだ練習中なのですから!!それに何ですか!!女性の部屋に無言で入ってくるなんてっ……………」
横から彩音を庇うように現れた桜乃に、流石の薫も頭が上がらないのか、グッと黙り込むと、彩音の手を掴んだ。
「うわっ…!!ちょ……薫っ!!」
無理矢理立たせるとそのまま彩音を引っ張って行く。
そんな姿を見て桜乃は手を頬に当てて笑った。
「まだまだ子供ですねぇ。」
「本当に」
一人呟いた筈の言葉に返答があった。
何かと思い声した方を見ると、蛍が壁に寄りかかっていた。
「…………いつからいたの?」
「ついさっき。」
桜乃の問いににっこりと答えた蛍はこの直後、部屋を追い出される事になる。