逢瀬を重ね、君を愛す
「え!?桜乃と蛍さんって幼なじみなの!?」
驚く彩音に薫は首を縦にふる。
「うわぁーそうだったんだ…」
はじめて知らされる事実に驚く彩音は心なしかウキウキしていた。
「薫には?居ないの?幼なじみ」
何気無く問うと、一瞬目を見開いた。
薫が、少し固まったのだ。
表情も少し影がさしたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。
そして彩音の頭を撫でる。気を紛らわせる様に。
「どうだろね」
「あ、はぐらかした」
「なんの事かなー?」
すぐいつもの調子に戻った薫に、尋ねれる訳にはいかなかった。
不意に立ち止まった彩音は薫の背中を見つめる。
まるで、"幼なじみ"の存在に決して触れることのないよう
拒絶しているようだ。
―…過去に何かあったのかな?
見つめる先の薫が不思議そうに振り返る。
「どうした?」
いつも通りの優しい笑顔で手を差し出してくれる。
それだけで嬉しくなる。
「なんでもないっ」
笑顔で彩音は駆け出し、薫の差し出された手を握りしめる。
薫が嫌だと思うなら、聞かない。
いつか話してくれるだろうか。
淡い期待を胸に薫と彩音は歩いて行った。