逢瀬を重ね、君を愛す
「…嘘をついてまで、彩音殿に聞かれたくない事ですか?」
蛍の言葉に返事はない。
代わりに読んでいた書物の一部を指差す。
疑問に思いながらも素直に受け取り読み進める内に、蛍の顔も強ばっていく。
「帝……これは…」
「言うな。」
蛍の言葉を遮る。
薫は祈るように手を合わせ、頭を乗せた。
「彩音には……言うなっ。」
その言葉に懇願の色が見え、蛍はただ書物を握り締めて薫を見つめていた。
ドサッと屋根の雪が落ちる。
もうすぐ春がくる。