逢瀬を重ね、君を愛す
第四章
目覚めよ心
「彩音、今晩だからな!」
それだけを告げて薫は行ってしまった。
「……………今晩………??何があるの?」
隣にいた桜乃に聞いてみるが、桜乃も首をかしげる。
「さぁ…なんの事でしょうね…??」
「ねぇ…」
相槌を打って、目の前の作業に戻る。
彩音の手には、針と布。
裁縫だ。
「………お願いだから、手には指さないでね。」
冷や冷やしながら、見つめる桜乃に、彩音は自信満々に答える。
「大丈夫。………私最近、指刺してないから。」
それが普通だから。と思うが、口には出さない。
真剣に布と針を見つめる彩音を、桜乃が真剣に見つめる。