逢瀬を重ね、君を愛す
想いは夜桜より
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「彩音、こっち。」
薫に手を引かれて丘をあがる。
繋がれた手を見ると、昼に桜乃に言われた事が頭をよぎる。
『帝の事が好きなのね』
――んな事ないよっ!!
頭を振って桜乃の言葉を消す。
「彩音…大丈夫か?」
「んっ…だ、大丈夫!!」
見られてたぁー!!と思わず顔が赤くなる。
でも薫は気にする素振りはせずに、また前を向く。
「そっか。ならいいよ。」
そしてまた進んでいく。
行き先は告げられていない。
どんどん闇の中をすすみ、明かりがあるとすれば空に輝く星と月だけ。
どんどん不安になっていく気持ちから、握る手に力を込めた。
「ね、薫…どこ行くの?」
「ん…?もうちょっと。」
――ごめん、答えになってない。
教えてくれないつもりなのか。
彩音はあきらめて、ただ薫に連れていかれるがままついていった。