逢瀬を重ね、君を愛す
「・・・身なりの違う娘。お前は・・・誰だ?」
「あたし・・・あたしは・・・」
なんて言えばいいのか分からない。
分かるのは、今まで居た世界と、ここは違うと言うこと。
続きが出てこない、彼女に、彼は、優しく促した。
「・・・そなたの名は?」
「名前…。もと…しき、本式彩音。」
「アヤネ…彩音か。いい名だ。」
繰り返し復唱した、彩音の名をつむぐと、彼は優しく微笑んだ。
その笑顔に、少し安心した彩音は不意に泣きそうになった。
「あの・・・あなたは・・・?」
「・・・薫だ。」
「薫・・・」
今はそう呼ばれていないがな、と小さな声で呟いた薫の声が聞こえた。
そして、一瞬薫の顔に影が入ったかと思ったが、すぐに吹き飛ばされる。
「だが、彩音には"薫"を許可する!薫と呼べ、彩音!!」
上から目線かよっ!!と突っ込みたくなったが、そこは我慢した。