逢瀬を重ね、君を愛す
定まらない想い
『…俺がお前を呼んだんだ』
昨夜、薫が言った言葉が頭から離れない。
別に薫のせいじゃない。
きっとこれは偶然。
だけど薫は自分のせいだと決めつけて、苦しんでいる。
「ちがうよ…薫のせいじゃない。」
そう呟いても、聞いてくれる人はいない。
それに、薫が苦しむと分かって彩音には想うことがある。
「…本当に、薫が呼んでくれたならいいのに。」
素直に応じることができたのなら、この先、違う何かが待っていそうな気さえする。
そっと目を閉じると開けた戸から舞い込む風が優しく頬を撫でる。
そしてこの場に似つかわしくない香りまで運んできた。
「え?何黄昏てんの?」
相手を気遣わない無神経な言葉。
閉じた目を開けると、彩音は勢いよく立ち上がり、来訪者を指差す。
「うるさいわね!てか何勝手に人の部屋入って来てるのよ!普通女の子の部屋に入って来ないもんなんでしょ!それはいつの時代も一緒だから!だから、出てけー!」
一気に捲し立てると、来訪者、清雅はご機嫌に拍手を送る。