逢瀬を重ね、君を愛す
「おー、ようやくこっちの時代の常識を覚えたか。ま、こんだけいりゃバカでも覚えるよな」
完全にバカにした言い方で、彩音は清雅に背中を向けると後ろから座る衣擦れの音がした。
「え、座るの?」
「何の為に俺が来たと?」
清雅の意図が掴めなくて顔をしかめる。
すると清雅の手が人差し指を立ててスッと口元に寄せた。
「秘密話をするために決まってんだろ」
そう言って笑う清雅に、彩音は顔をしかめる。
「知りたくないか?帝のこと」
ドクッと胸が鼓動する。
じっと清雅を見つめると彼はニヤッと口端を上げた。
「…なんで、清雅が薫のこと知ってるの」
「一人前に警戒してんの、俺信用ねーな」
笑う清雅は、脇息を引き寄せると、肘を置いて扇を開いた。
「俺とあいつ…帝は幼馴染っつーか、腐れ縁みたいなもん。だからあいつのことは大体知ってるよ」
その言葉に彩音はしぶしぶ納得する様子を見せた。
少し警戒の色を緩める。
「…なんで私に薫のこと話すの」
「それは、ほら…」
そっと清雅の顔が扇で隠される。
目だけ見えている状態で、射抜いてくる瞳。
「お前は知りたいだろ、彩音。」
その言葉はすべてを見透かされているようで、気づいた時には首を縦に振っていた。
その行動に清雅は嬉しそうに笑う。
「よし、なら教えてやろう。薫のことを。その代り…」
―――これを聞いて後悔するくらいなら、薫の前から消えてくれ。