逢瀬を重ね、君を愛す
遡ること数年前、まだ薫が東宮だったころの話だ。
「東宮、東宮。」
春の陽気な日差しに誘われて縁側で昼寝をしていた薫は自分を呼ぶ声にゆっくり目を開けた。
風になびく黒い髪。
陶器のような白い肌。
薄い桃色の頬に赤い紅。
人形の様な彼女は目をさました薫の衣服を直す。
「こんな所で寝て…風邪を引いたらどうします。」
着崩れした衣服が丁寧に直されていくのを見ながら、薫は目の前をそよぐ黒髪を指に絡めた。
「大丈夫だよ」
「ダメです、信用できません。」
キッパリという彼女に薫は笑う。
それにつられて彼女も笑う。