逢瀬を重ね、君を愛す
―――そして月日は流れ
「…俺が、帝…に?」
使者からの手紙を持つ手が震える。
まだ内密にというこだが、近々隠居する旨が父からの手紙に記されていた。
父から回ってきた、最高権力の称号。
嬉しい気持ちと不安な気持ち。
微妙な表情をした薫に、遠花は嬉しそうに微笑んだ。
「おめでとうございます。」
「ありがとう、遠花。」
そして遠花はこっそりと祝いの酒を持ってきた。
戸を開放し、夜に浮かぶ満月を眺めながら杯に酒を注ぐ。
「遠花、お前も飲んでくれ。祝ってくれるだろ?」
個人的に誘っても断ることは分かっているから、こんな卑怯な言い方でしか誘えない。
さすがの遠花も今回は断らずに、はい。と杯を持った。
とくとくと酒を注ぐと、彼女は少し杯をあげて
「本当におめでとう、ございます」
そういって杯を傾けた。
今夜は二人だけの秘密の祝いの夜。
満月や酒が背中を押し、そっと遠花の頬に手を伸ばす。
「…遠花、そのまま聞いてくれ。」
払いのけようとした彼女の手が、宙に浮いて止まる。
悩ましげな瞳を見つめながら、薫は真っ直ぐに彼女を見つめて口を開いた。