逢瀬を重ね、君を愛す
思わず涙をこぼしてしまう彩音に、清雅はそっと近づいた。
視線をうつすと、真剣な表情の清雅と見つめあう。
「…言いたいこと、わかるよ。」
ぎゅっと手のひらを握りしめる。
「…これ以上、薫傷つけたくないよ」
そう絞り出した声に、清雅が柔らかく微笑んだ。
それから、申し訳なさそうな、でも安心したような。
そんな微妙な表情を浮かべてから、彩音の頭に手を置いた。
「…ごめんな。でもありがとう。帝だけど、その前にあいつは俺の大事な幼馴染なんだ」
清雅が撫でる手にしたがって微かに体も揺れる。
笑えないのはわかっていたが、それでも無理して笑顔を見せた。
「わかってるよ」
「ん。じゃあこれだけだから。」
ぽんぽんと優しく頭をたたかれ、清雅は立ち上がる。
そのまま踵を返すと、清雅の香りは遠くへといざなわれる。
一人になった彩音に押し寄せる、孤独。
「っ…ふっ。…だ……やだ…やだよ…薫!!」
なんで自分はこの時代の人じゃないのか。
なぜこの時代に生まれてこなかったのか。
悔やんでも悔やみきれない。
次々溢れる涙は止まらない。
どうするべきか、頭の中ではわかっているのに。
気持ちが。心が。
ついていかない。
畳にしみこんでいく涙を今はどうすることもできなくて、崩れ落ちた彩音にできることは。
ただ、泣くことだけだった。