逢瀬を重ね、君を愛す


この時代に来て、初めての京。

行きかう人々に目線を散らしながら、朱雀大路を南へ下る。



「すっごい・・・」


ここが、自分の時代で言う京都なのだ。
その風景はあまりにもかけ離れているが、この縦と横に区切られた碁盤の目のような作りには微かに懐かしさがこみ上げる。


「っていっても、教科書でしかみたことないけど」


もし、自分の時代に帰ったらまず、京都へ行こう。
そう心に決め、ずんずん歩いている時だった。


「そこのお嬢さん」

「…あたし?」


くるっと振り返ると、そこには見慣れない男。
人を見た目で判断してはいけないといわれるが、そこにいた男は紛れもなく不貞な輩。



「そう、君だよ。君。かわった服を着ているね」

「え…そう…ですか?」


返事をしてしまったことに後悔しながらも、じりじりと後退する。
そう、宮中ではもう馴染んでしまい、制服のことなんて頭からすっぽりと抜けていた。

わざわざ着物をかぶってきたのは、宮中から出るときに顔を見られないためで服を隠そうと持ってきたものではなかったのだ。


「もしかして…君は―――そうか。そうだよなあ」


勝手に納得して、ニヤリと口角をあげる。
その姿にゾッと背筋を冷やすと、彩音は何も考えずにその場を駆け出した。


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