逢瀬を重ね、君を愛す
「・・・!待て!」
いきなり疾走しだした彩音に、男も慌てて走ってくる。
「っ、ご…ごめんなさい!!」
行きかう人にぶつかっては謝り、スピードを緩めないように人の間を縫っていく。
振り返ってる暇なんてなかった。
宮中に帰ればよかったのかもしれないが、もともと、一人でじっくり考えたくて出てきたのだ。
帰る。なんて選択肢は彩音の頭からは綺麗に抜け落ちており、彩音は一目散に走った。
広い広い朱雀大路を南へ南へ。
追ってくる男が、必死で追いかけながらも、笑っていたことには気づかずに。