逢瀬を重ね、君を愛す
「っ…も…無理…」
漸く彩音が止まったのは人気の少ない門の下だった。
肩を上下させながら物陰に隠れた彩音はそっと、後ろを確認する。
息をひそめるが、あの男の気配はなかった。
「ふー…助かった。」
徐々に震えだす体をさすりながらそっとその場に座りこむ。
そして今の状況を振り返ってみた。
時代を超えて、過去へ来てしまったこと。
そこで出会った彼、この時代の帝・薫に惹かれていること。
けど、もう少しで現代に帰らなければならないこと。
その中でも一番くるしいのが薫のことだった。
あの優しい薫に正妻じゃなくても妻がいたこと。
薫に愛した女がいたこと。
そして清雅に、釘をさされた。
「私じゃ…ダメなんだ…ダメなんだよ…かおる…」
どんなに好きでも、伝えてはダメな想いがある。
これを伝えれば…きっと薫を傷つけてしまう。