ビターチョコレート
第一章★千代子SIDE
チュンチュンと、雀の鳴き声が聞こえる春の朝。
のどかで、暖かくて、もう少し寝ていたい気分。
日曜日なので、もう少し寝ていようと思った。
松田千代子、18歳。自宅近くの女子大に通っている。
♪♪~♪~♪♪~♪
鳴り響く、着信音。
ディスプレイを見ると、“平山裕貴”と出ていた。
裕貴さんは、慎一さんの同居人。
そして、慎一さんは…私の彼氏。
………カアッ!
“彼氏”だなんて、
まだ実感が湧いてないせいか、妙に恥ずかしい。
長年の片思いが実って、やっと、付き合う事ができたのである。
そんな事を考えてるあいだにも、着信音はずっと鳴っていた。
(はっ早くでなきゃ!!)
アタフタして、通話ボタンを押す。
「はいっ。もしもし?」
「あっ!千代子ちゃん!?
大変だよ~。慎ちゃん、熱出しちゃってさー。
看病しに来てくれない?
明宏くんは仕事で朝からいないし、俺もお昼から仕事なんだよねえ…。」
明宏…高田明宏さん。慎一さんの、もう一人の同居人。
「ええっ!それは大変ですね!今すぐ向かいます!」
「頼むねー!ごめんね!!」
そう言って、電話が切れた。
大慌てで用意し、慎一さんの家に向かう事にした。
向かう途中、薬局やスーパーに寄って、色々買い占めて行った。
「お…お邪魔しますっ」
「どーぞ!あがってーん」
裕貴さんはニコニコしながら私を中に入れてくれた。
「慎ちゃんと付き合いだしてからここに来るの初めてだねー。
慎ちゃん、なんで誘わないんだろー」
裕貴さんは笑いながらそう言った。