ビターチョコレート
「お見合いって…また、なんで…。」


「俺の恩師が、お前の事大層気にいってな。是非とも息子にしたいと言い出した。」


「はあ…なんか気に入られるような事してへんけど」


「とにかく、次の日曜日までに風邪を治しておきなさい。休暇の許可はもう取ってある。…また電話する。」


「ちょ…親父?」


ブツッ!ツー…ツー…一方的に電話が切れた。
本気かよ…あの親父。考えると、余計に熱が出てきたので、俺は再び寝る事にした。



次の日、まだ微熱だったが仕事に行く事にした。


「おー!森川くん、久しぶり!」


声をかけてきたのは、武田警部補だった。
あの、修司のアホの叔父だそうだ。


「まだ顔赤いみたいだけど、大丈夫かい?」


「大丈夫ですよ、もうほとんど熱は下がりましたんで」


俺がそう言ってスタスタと歩いていると、武田警部補は腕を組んだ。


「森川くんは真面目だね~。じゃ、俺は仕事に戻るから!」


そう言って武田警部補は走って行った。



「よっ、慎一!」


俺の頭を叩いたのは、同僚の長野雅弘だった。


「風邪だってー?珍しいじゃん」


長野の隣にいた同僚の浅野薫がそう言った。


「ほんま、何年振りやろ。これでも学生時代は皆勤賞貰ってたのが自慢やのに」


そう言って笑った。自分の職場につき、デスクに座る。
昨日休んでいたせいで、書類が溜まっていてウンザリする。


さっさととりかかり、終わらせる事にした。


「慎一、昼飯食いにいこーぜ!」


そう長野が言った。浅野も交えて、食堂へ向かう。


「あれ?慎一、うどんだけ?」


「おお、まだ風邪完治してへんからな」


そう言って鼻をすすって席に座った。


「慎一、そういえば、お見合いするんだって?」


ブ…ッ


口に入れたお茶を噴出しそうになった。
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