ビターチョコレート


「俺の情報網、甘く見んなよ」


と、浅野が言う。
浅野がどこからか聞いて、長野に言ったのか…。


「どこのどいつか知れんけど、親父の顔立てるだけや」


そう言ってうどんをすする。


「千代子ちゃんはどうするの?」


ブ…ッ。


また噴出しそうになった。なんで…長野には言ってへんのに!


「浅野…お前か」


俺は浅野を睨み、額をグリグリと押し付けた。


「いた…痛い!ご…ごめんってばー!」


俺と浅野のやりとりを、長野は笑って見ていた。


「千代子には…話さへんよ。」


そう言うと、長野は頷いた。


「お前は?瞳とどうなっとんねん?」


「うーん…」


なんだか悩んだような顔をしている。


「お前…まさか、まだ返事してへんって言うんちゃうやろな?」


「その、まさか。」


…はあ?本気で言うてんのかよ、こいつ。
あの時から何ヶ月経ってると思ってんねん。


「あのなあ、俺は何のために……」


…“あいつを諦めたと思ってんねん”、
と…言うはずだった。でも、それは俺の勝手な意見であり、第一…長野はその事を知らない。


「…慎一?」


「…なんでもない。はよ、返事したれよ」


俺はそう言うと、その席を離れた。
もう…あいつには未練は無い。


俺が好きなんは、千代子や。
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