ビターチョコレート
「ほらあー。やっぱ寝てないとー」
裕貴さんはそう言って慎一さんを部屋に戻そうとする。
「…いえっ!全然悪くないです!!」
ワンテンポ遅れて、私は言う。
慎一さんの背中を押して、部屋に入れようとしている裕貴さんと慎一さんは、こちらに顔だけ向けていた。
「むしろ、嬉しいです!
慎一さんのお世話が出来るなんて!幸せです!最高です!」
熱く語ってしまった。
ネギを力強く握り締め、ネギ汁が足元に落ちた。
「いや、そこまでオーバーに言わんでもええけどな」
「きゃー!慎ちゃん、愛されてるう!」
裕貴さんはキャッキャッとはしゃぎ、
慎一さんに一発、殴られていた。
「そして、もし私に風邪がうつったら…
慎一さんに看病してもらえたら…って、キャー!言っちゃった!!」
自分で言って、興奮する私。
「…おい。この変態をなんとかしろ。逆に悪化するわ」
裕貴さんの首根っこをつかみ、言う慎一さん。
「またまたー!嬉しいくせに!!」
慎一さんに三発殴られた裕貴さんはその場でしゃがみこんだ。
「…おい。ハゲ。」
「はいっ!!」
貶されている呼び方とはいえ、もう定着してしまった。
違和感を抱かず、返事をする。
「…おかゆ、出来たら起こせ」
「…はいっ!!」
私はとびきりの笑顔で、返事をしていた。
慎一さんは部屋に戻った。
「よーし!頑張るぞ!」
そう言って気合を入れた。