ビターチョコレート
「充電!」


「ドサクサに紛れて手繋ぐな!」


「充電ですー!いいじゃないですかっ。恋人同士なんですから」


そう言って、千代子は笑った。


「…せやな。」


俺は納得し、手を離す事はしなかった。
ホンマは恥ずかしくてしゃーないけど、今日は頑張ってもらう為に、充電しといたるか。と、考えた。


手を繋いだまましばらく歩くと、実家に着いた。
まあ、お嬢様のコイツの家に比べたら、デカイ家って訳じゃないんやけど。


「えっ?ここ…慎一さんの実家ですか?」


「おお。お前の家に比べたら、小さいもんやろ?」


俺がそう言うと、千代子はいいえ、と顔を横に振った。
そして、ひとつ思い出した事があった。今、慎二が実家に帰ってきてるのだった。


「今、慎二が実家帰ってきてるからうるさいかもしれんけど」


そう言うと、千代子は笑って、


「慣れてます」


と言った。
そうか、慎二とは、小学生の頃から仲良しやったな、と思った。


『あっ!兄貴ー?親父まだ帰ってきてないけど、入ったらー?』


慎二がインターホン越しにそう言う。


「そうか、じゃあ中で待っとくか」


そう言うと、千代子は頷き、家に入れた。


「兄貴ー!久しぶりっ!」


玄関で靴を脱いでいると、テンションの高い慎二が出迎えた。後ろには由梨ちゃん。


「あ、慎一さん。千代子ちゃん。お久し振りです。」


そう言った由梨ちゃんは、腕に赤ちゃんを抱いている。
俺の甥の大助。千代子は初めて会うみたいで、挨拶をしていた。


「まま、二人共立ってんと仲入ったら?まだ誰もおらんし」


慎二がそう言い、リビングへと入る。
変わっていない家の家具などを見て、俺と千代子はソファーへと腰を下ろした。
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