ビターチョコレート
「へえー、二人は、付き合ってるんですね」


由梨ちゃんがニコニコしてこちらを見る。


「そう、こいつしつこいから」


と、言ってやる。
すると、千代子は焦った声で、


「えー!しつこいからですか?」


と言った。
予想通りの反応に可笑しくなり、笑って“冗談やって”と言った。


千代子はむくれて、視線を逸らした。


…ガチャッ!玄関から音がする。


「あ!親父帰ってきた!」


慎二は玄関に向かう。
しばらくすると、慎二と親父がリビングに入ってきた。


「…来てたのか」


少しネクタイを緩ませ、いつもの顔でこちらを見た。
いつ見ても…怖い顔したオッサンやと思う。


「おお、親父に紹介しようと思ってな」


「…紹介?」


親父はそう言って、千代子の方に視線をうつす。


「彼女の、千代子。」


「はっ、はじめまして!松田千代子です!」


千代子はこれでもかってくらい、深くお辞儀をした。
…やりすぎや、と思いつつ、親父の方を見る。


「どうゆう事だ」


多分、分かってて言ってるんやと思う。
でも俺は、今の気持ちを親父に伝えた。


「俺には、彼女がいます。まだコイツは学生で結婚は出来ないですが、今はコイツとしか結婚は考えられへん」


うわ…、クッサ。
言ってて吐き気するわ。


こうゆうの、ほんま無理。
と、俺が思ってたのに、千代子は口元が笑っていた。


何故かむかつき、“喜ぶな!”と耳打ちした。
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